「スト子さん、あなたの疑問、お答えしましょう!」
「いや、それより血大丈夫……?」
「心配には及びません。じきに乾きますので」
〜そう……、未開の地・島根県に生まれ、大地と野生の獣達と共に育った彼女にとって、
この程度の怪我はかすり傷なのである〜
「あぁ、そう……深く掘り下げるのも面倒臭いから分かったわ。
で、私の疑問に答えてくれるんだったわよね。
私、イラスト工房さんで修正がどこまで対応してもらえるか知りたいの」
「はい! それでは、さきほどから話題に出ていたアフロをモチーフに説明しましょう」
「え、あなたいつからいたの?」
「……まぁ、まずはざっくり、こんな内容の依頼をスト子さんから 受けたとしまして、」
「担当者の私は、こんなイラストを初校で提出したとしましょう。 どうですか?」
「ほー、なかなかいい感じね!でも、もっと目を大きくしてほしいわ。
それから、鼻を高くして、顎をシャープにしてちょうだい。 服の色は赤がいいかしら。
あ、……結構注文つけたけど大丈夫?」
「はい、無料で対応できますよ。お任せください!」
「あらマーベラス!!私にそっくり!ねぇスト男!」
「おお……京香と首を入れ替えた君にそっくりだよ」
「気に入っていただけたなら嬉しいです!」
「ねぇねぇ、じゃあ、そのイラストの隣に、
キノコヘアーのハンサムボーイを入れてもらえないかしら。
一人じゃやっぱり、凍えてしまうもの……」
「スト子、それって……」
「スト男……」
「スト子……」
「スト男……」
「スト子さんすみません、そちらは追加料金を相談させていただけますか?」
「……ちょいと、あなた空気読みなさいよ。
……まぁそうよね、何かの要素を増やすっていうのは、修正とは違うかもね。
ちなみに、今のイラストを少女漫画っぽいテイストに変えて欲しいって言ったら
どうなるの?」
「テイストを変更となると、イチから描き直しになりますので、
その場合も料金ご相談させてください」
「ふむふむ。”修正の境界線”ちょっと掴めてきたような……ねぇスト男?」
「ああ、つまりは、基本的に希望イメージに近づけるための修正は無料なんだけど、
こっちの都合で最初に出した依頼には無かった要素を足したり、
ガラッと変更したりは料金が発生するってことかな……?」
「そうですスト男さん!一概には言えませんが、ざっくり説明するとこんな感じです」
「もちろん、無料で対応できない修正・追加の場合は、きちんと事前にご相談いたしますし、
こちらの力不足でどうしてもイメージ通りにならなかった場合、無料キャンセルも可能です」
「なるほどね、それなら安心だわ! じゃあ早速依頼……
というか、さっき描いてくれたイラストが欲しいんだけど、おいくら?」
「スト子さん……PCメールの受信BOX、開けてみてください」
「え?」
「井上さん……あなたって人は……!」
「フッ。礼には及びません。
それでは、名残惜しいですが、私はそろそろ社に戻ります」
「あっ、待って……!」
二人の制止も空しく、風のように去って行った井上……。
取り残されたスト子とスト男は、顔を見合わせた。
「……いや、窓ガラスの弁償代は?」
おわり
※この物語はフィクションです。
※イラスト工房のスタッフは、窓ガラスを割りません。
※ご依頼の際に不明点・お困りのことなど出てきましたら、
イラスト工房へお気軽にご連絡ください。