衣良スト子は、パソコン画面を見つめて溜息を吐く。
わんぱく幼稚園・園長の彼女は、広報パンフレットの表紙にイラストを
使いたいと考えていた。
そこで辿り着いたのが、「イラスト工房」のサイトである。
だけど、なかなか依頼には踏み切れないでいた……。
「どうしたんだいスト子、険しい顔して」
「スト男……」
彼は職場結婚した夫の衣良スト男である。
「うちの広報誌にイラストを使いたいと思ってるの。
で、どうせならフリー素材じゃなくって、世界に一つだけの
イラストを頼みたいのよね。
でも、イラストレーターに私の要望が正確に伝わるとは限らないわ……。
……そう、所詮は違う土地に生まれ、違う物を食らい、
違う夢を追って大人になった赤の他人……。
期待して、もしもイメージと違うイラストが仕上がったら、
私、一体どうすればいいのかしら……」
「なるほど。君の髪型がアフロになっちゃったみたいに」
「そうよ!私がなりたかったのはパパイヤじゃなくて京香の方よ!」
「もしイメージと違ったら、修正してもらえばいいだろ」
「え?修正?そんな簡単にできるのかしら」
「そのサイトに”修正回数無制限0円”って書いてあるじゃないか」
イラ男の指差した先を見て、イラ子は眉を上げた。
「あら、本当だわ!」
「うん、だから安心して頼んでみなよ」
「うふふ。そうね」
「……いや、ちょっと待って」
「…………何」
「修正って、一体どこまでが修正の範囲なの……?」
「は?」
「例えば、私のアフロを本来の要望通り京香風パーマにするのは修正かもしれない。
でも、私の首を京香の首とすげ替えるのは……?」
「お直しの範囲超えてるだろ。ブラックジャック呼んでこいよ」
「そこんとこ、そこんとこよ!できる・できないの境界が知りたいわ。
あぁ、気になる……気になるわぁスト男……」
「そんなこと言っ」
パッリーン!
「……突然ですが、わたくし通りすがりのイラストレーター・
イラスト工房の井上です。
スト子さん、あなたの疑問、お答えしましょう!」
ーーーーー突如現れた謎のイラストレーター……
次回、明らかになる修正の境界線……!お楽しみに!!